土壌汚染の危険性
汚染土壌が社会問題となった事例
■渡良瀬川流域
1880年 渡良瀬川の魚は有害であるとして捕獲禁止の布告がはっせられた。
その後、洪水にあった流域で農作物の被害が発生(足尾鉱毒事件)。
1891年 田中正造代議士が政表に対し、損害補償と将来の予防を要求。
1958年 銅鉱山の堆積場が決壊し、主として金属イオンを含んだ鉱毒水が水田に流入。
約7000haの水田が汚染され、作物の収穫が減少。
1972年 農用地土壌汚染防止法に基づき銅が特定有害物質に指定れた。
1973年 足尾銅山閉鎖。
■神通川流域
1920年 神通川流域1370haの水田で銅や亜鉛による農作物被害が発生。
1922年 奇病が発生(イタイイタイ病)。
1925年 再び農作物被害が発生。
1968年 イタイイタイ病の主な原因は、鉱業所の排水中に含まれるカドミウムが原因であると発表。
1970年 食品衛生法に基づき米に含まれるカドミウムの基準が設定された。
1971年 イタイイタイ病裁判で原告勝訴。
■土呂久地区
1920年 鉱石の採掘に伴う排煙中の砒素による健康・農作物被害が発生。
1962年 鉱山閉鎖。
1971年 砒素中毒による健康被害が発表され、農地に蓄積された砒素が問題となる。
1975年 農用地土壌汚染防止法に基づき、砒素が特定有害物質に指定された。
■東京都江東区六価
昭和50年代に発見された土壌汚染である。化学品製造メーカーで発生した六価クロム鉱砕を利用して埋め立てた土地を東京都が購入し、住宅地として開発し
た後に土壌汚染が発覚した。メーカーと東京都の間で和解が成立し、対策が行われた。対策費用の合計は200億円以上と推定され、そのうちかなりの部分を
メーカーが負担したとされている。
■千葉県君津市(半導体工場)
半導体工場付近の井戸から揮発性有機化合物が検出され、君津市が工場の同意を得て調査を行ったところ、汚染の主な原因は工場であることが確認された。いわゆるハイテク汚染の典型的な例である。会社側は、調査・対策策費の大半負担するとともに、住民に対して補償金
を支払った。
■広島県福山市(化学薬品工場跡地)
化学薬品メーカーの工場跡地の再開発計画の途中で汚染が発見され、開発が中断した。主に重金属・PCBによる汚染とされており、同社は汚染修復費として
100億円以上の特別損失を計上した。土壌汚染の調査・修復作業のため、工場跡地の再開発計画の進行は大幅に遅れた。
■東京都八王子市(農薬工場跡地)
ドイツの化学メーカーの日暴法人が1992年に工場を閉鎖。跡地利用に向けた自主調査により、無機水銀による土壌汚染が判明した。対策については、汚染
土壌に水蒸気を加えて水銀を気化させ、分離・回収するという方法が採用された。
費用は約70億円と報じられている。また、住民に対し汚染濃度や工事の状況を開示するという対応も行っている。
■大阪府大阪市(精錬所跡地)
大阪市北区の複合施設のマンションが土壌や地下水の汚染を隠したまま分譲された問題。マンション販売開始約1か月前から地下水検査で環境基準値を大きく超えるヒ素やセレンを検出したが、こうした事実を購入者に知らせず販売していた。事業主がマンション購入金額の最低25%を解決金として住民に支払うことなどを条件として和解。支払総額は75億円を超えたとみられる。行政処分や大企業トップの引責辞任等、社会的影響の多い結果になったことで注目された。